いつまでも元気で楽しく暮らしたいというシニアにとって、無視できないのが「サルコペニア・ロコモ・フレイル」です。
この3つを予防することができれば、健康で豊かな老後が待っていると言っても過言ではありません。
「サルコペニア・ロコモ・フレイル」とは何なのか、どのような関係があるかについても知っておきましょう。
サルコペニア・ロコモ・フレイルとは何か?
サルコペニア・ロコモ・フレイルは、いずれも運動器の健康に深い関わりのある言葉です。
この3つは、それぞれ別の意味を持ちながらも共通点も多く、予防することにより健康寿命を延ばす事ができるという点では一致しています。
サルコペニアとは?
サルコペニア(sarcopenia)とは、ギリシャ語で筋肉を意味する「サルコ(sarx)」と喪失を意味する「ペニア(penia)」を組み合わせた言葉で、「加齢や疾患により、全身の筋肉量が減少し、筋力の低下や骨格筋の委縮、身体機能が低下した状態」を指します。
日本語では「筋肉減弱症」または「筋肉減少症」と訳されることもあるサルコペニアは、主に次のような症状として表れます。
- 手足が細くなる
- 重いものが持てなくなる
- ペットボトルのふたや缶のプルタブなどを開けるのが難しくなる
- 椅子からすぐに立ち上がれなくなる
- 速く歩けない
- 階段の昇り降りがつらくなる
- 疲れやすくなる
- 着替えや入浴などに時間がかかるようになる
サルコペニアを放置すると、徐々に全身の筋力低下が進み、立っている時や歩行時のバランス機能が悪くなるため、転びやすくなり骨折の危険性も高くなります。
サルコペニアの原因としては、加齢による筋肉量の減少、日常の活動力不足、栄養不足、何らかの疾患などが考えられています。
人の筋肉量は加齢とともに減少して行く傾向がありますが、タンパク質の摂取不足と運動量の減少がある場合は、作られる筋肉よりも分解される筋肉の方が多くなるため、減少率が加速します。
そのため、食事でタンパク質を積極的に摂り、筋力・筋肉量の向上のための運動を続けるようにすると進行の程度を抑えたり、予防することが可能です。
ロコモとは?
ロコモとは、「ロコモティブシンドローム(locomotive syndrome)」の略称で、「骨・関節・筋肉・脊髄・神経などの運動器の障害のために移動機能の低下をきたしている状態」を指し、2007年に日本整形外科学会により提唱されたもので、日本語では「運動器症候群」と略されます。
ロコモの症状としては、日本整形外科学会が公開している「7つのロコチェック」が参考になります。
次の7項目のうち、1つでも当てはまる場合は、ロコモの可能性があるとしています。
- 片脚立ちで靴下がはけない
- 家の中でつまずいたり滑ったりする
- 階段を上るのに手すりが必要である
- 横断歩道を青信号で渡りきれない
- 15分ぐらい続けて歩くことができない
- 2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である
- 家の中のやや重い仕事(布団の上げ下ろしなど)が困難である
(出典:公益社団法人 日本整形外科学会:「ロコモ パンフレット2015年度版」より)
「骨・関節・筋肉・脊髄・神経」などの運動器は、複数が連動して動いています。
関節の痛みや筋力の低下など、どこかに障害が起こると歩行能力が低下したり、バランス能力が低下するなど、日常生活に制限をきたすようになり、放置すると要介護状態や寝たきりになるリスクも高くなります。
ロコモの原因は、「加齢」「運動不足による筋力の低下」「肥満・痩せ過ぎ」のほか、「骨や関節の病気」が引き金になることがあります。
中でも、骨密度が低下して骨折しやすくなる「骨粗しょう症」、ひざの関節軟骨がすり減る「変形性ひざ関節症」、背骨の中の神経の通り道である脊柱管が狭くなり下肢に痛みやしびれが現れる「脊柱管狭窄症」が三大原因と言われています。
このような病気の場合は治療を優先すべきですが、 高齢による運動器の衰えを主原因とするロコモの場合は、筋力トレーニングやバランス力トレーニングにより、予防や改善が可能です。
フレイルとは?
フレイルとは、日本老年医学会が2014年に提唱した概念で、英語の「Frailty(フレイルティ)」が語源となっており、日本語では、「虚弱」「衰弱」「脆弱」などと訳されます。
加齢に伴い、身体機能と精神機能が低下し、社会との繋がりも希薄になり、心身が弱った状態になることを指します。
健康な状態と要介護状態の中間に位置するため、このフレイルの状態が進行すると、寝たきりの状態になることもあります。
次のような症状が見られる場合は、フレイルの可能性があります。
- 食欲がなく、痩せて来た
- 歩くのが遅くなった
- 何をするのもおっくうになり、やる気がおきない
- なかなか疲れが取れない
- 瓶のふたやペットボトルのキャップが開けられない
- 風邪をひくとなかなか治らない
- 食べこぼしや、むせることが多くなった
- 外出したり、人と接する機会が減った
フレイルは、サルコペニアやロコモと共通する身体的変化がありますが、それに加えて気力の低下などの精神的変化や外出するのが億劫になるなどの社会的変化も見られるようになります。
しかし、早めに気づいて食事や運動などの生活習慣を改善することにより、フレイルの状態から再び健康な状態へ戻すことができます。
サルコペニア・ロコモ・フレイルになる順番は?
「サルコペニア」「ロコモ」「フレイル」は、お互いに関連性がありますが、進行する順番というものはなく、どれもみな悪化すると要介護状態や寝たきり状態を招く可能性があり、健康寿命にも影響を与えます。
サルコペニアは、加齢による筋肉量の減少と筋力の低下に焦点を当てた概念であり、ロコモはサルコペニアを含む運動器の機能低下による移動能力の低下を示す概念です。
また、フレイルは、サルコペニアとロコモにも共通する身体機能の低下に加え、精神機能の低下や社会性の低下が含まれます。
この3つの言葉の示す範囲は異なるものの、適切な運動と栄養バランスの取れた食事で予防や改善が期待できる点は共通しています。